バルデナフィルの相互作用
バルデナフィル(PDE5阻害薬)の相互作用について、医薬品添付文書の内容をもとに、臨床的な意味や薬理学的背景を交えて詳しく解説します。
10.1【併用禁忌】(絶対に併用してはいけない)
① 硝酸剤およびNO供与剤(ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、ニコランジルなど)
- 理由:バルデナフィルはcGMPの分解を抑制(PDE5阻害)し、硝酸剤はNOを供給してcGMPの産生を促進します。これにより、cGMPが異常に増加し、強力な血管拡張・降圧作用を起こし、命にかかわる重度の低血圧を引き起こす可能性があります。
- 臨床的危険性:血圧が急激に低下し、失神、虚血性心疾患の悪化、心筋梗塞のリスクがあります。
② リオシグアト(アデムパス)
- 理由:リオシグアトは可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬で、細胞内cGMP濃度を上昇させる作用を持ちます。
- 相互作用機序:バルデナフィルと併用すると、cGMPがさらに上昇 → 相加的な降圧作用 → 症候性低血圧の危険性。
③ CYP3A4強力阻害薬(抗HIV薬・抗真菌薬など)
代表薬:
- リトナビル(ノービア)、ロピナビル・リトナビル(カレトラ)、アタザナビル(レイアタッツ)
- イトラコナゾール(イトリゾール)、ケトコナゾール(経口)
- ダルナビル系、エンシトレルビル(ゾコーバ)、コビシスタット配合剤
- 理由:これらの薬はCYP3A4阻害作用により、バルデナフィルの代謝を大幅に抑制 → 血中濃度(AUC・Cmax)や半減期が著しく上昇。
- 臨床的リスク:副作用(特に血管拡張による頭痛、低血圧、視覚障害、持続勃起症など)が発現しやすくなり、過剰投与と同様の状態に陥る可能性。
④ QTc延長作用のある抗不整脈薬(クラスIA・III)
- クラスIA:キニジン、プロカインアミド、ジソピラミド、シベンゾリン
- クラスIII:アミオダロン、ソタロール
- 理由:バルデナフィル自体がQTc間隔延長の可能性があるため、これらと併用すると**QT延長 → 心室性不整脈(Torsades de Pointes)**などのリスクが増加。
- 特に高齢者や心疾患のある患者では要注意。
10.2【併用注意】(慎重投与を要する)
① CYP3A4阻害薬(中等度)
- 例:エリスロマイシン、ビカルタミドなど
- 影響:中程度ながらも、バルデナフィルの代謝が阻害されて血中濃度が上昇。
- 対処:投与量の調整や、投与間隔の延長などが必要になる場合あり。
② CYP3A4誘導薬(リファンピシンなど)
- 影響:バルデナフィルの代謝が促進 → 血中濃度が低下 → 効果減弱の可能性。
- 注意点:勃起不全への効果が得られにくくなる可能性がある。
③ カルペリチド(血管拡張薬)
- 併用による危険性:降圧作用が増強 → めまい、失神、低血圧などのリスク。
④ α遮断薬(テラゾシン、タムスロシンなど)
- 併用の注意点:
- α遮断薬自体が血管を拡張するため、本剤と併用すると低血圧のリスクが増大。
- 特に立ちくらみ、起立性低血圧、失神に注意。
- 推奨される対策:
- α遮断薬を安定投与後にバルデナフィルを開始。
- できれば投与時間をずらす(例:4時間以上の間隔)。
まとめ
相互作用の種類 | 内容 | 主なリスク | 対処・注意点 |
---|---|---|---|
併用禁忌 | 硝酸剤、リオシグアト、強力CYP3A4阻害薬、QT延長薬 | 低血圧、心不整脈、過量投与様症状 | 絶対に併用しない |
併用注意 | 中等度のCYP3A4阻害薬・誘導薬、α遮断薬、降圧薬 | 効果増強/減弱、副作用 | 投与量調整、間隔を空けるなど |
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