バルデナフィルに関して特定の背景を有する患者に対する注意事項

バルデナフィルに関して特定の背景を有する患者に対する注意事項(添付文書9章)の詳しい解説です。各患者群にはそれぞれ固有のリスクがあるため、慎重な評価と投与調整が求められます。


9.1:合併症・既往歴等のある患者

● 9.1.1 陰茎の構造上の欠陥(屈曲、陰茎の線維化、Peyronie病など)

  • 背景:陰茎の奇形や線維化により正常な勃起が困難、または痛みを伴う場合があります。
  • リスク:バルデナフィルで勃起が促進されると、陰茎の異常構造によって勃起時の痛みや損傷、持続勃起のリスクが増加します。
  • 対応:このような解剖学的異常がある場合は、慎重に評価して投与の可否を判断します。

● 9.1.2 持続勃起症の素因となる疾患(鎌状赤血球性貧血、多発性骨髄腫、白血病)

  • 背景:これらの疾患では血液の粘性や血流に異常が生じやすく、プリアピズム(異常持続勃起)を引き起こす素因となります。
  • 対応:こうした患者には、持続勃起に関するリスクを十分に説明し、使用の可否を慎重に判断します。

● 9.1.3 PDE5阻害薬や他のED治療薬を使用中の患者

  • 背景:PDE5阻害薬(例:シルデナフィル、タダラフィルなど)同士や、他のED治療薬との併用データは不十分。
  • リスク過剰な血管拡張作用、低血圧、持続勃起などの副作用のリスクが高まる。
  • 対応併用は避けることが原則。他剤を使用している患者は切り替え時に適切な間隔を取ること

● 9.1.4 出血性疾患または消化性潰瘍のある患者

  • 背景:NO供与体(例:ニトロプルシドナトリウム)との併用で血小板凝集抑制作用が強まる。
  • リスク:出血傾向がある場合、消化管出血や脳出血などの重大な合併症を引き起こす可能性。
  • 対応:安全性が確立していないため、原則使用を避ける

● 9.1.5 大動脈弁狭窄症、特発性肥大性大動脈弁下狭窄症(LVOT閉塞)

  • 背景:これらの疾患では、心拍出量の調節が難しく、血圧低下による失神や心停止のリスクがあります。
  • 対応:バルデナフィルは血管拡張作用があるため、心血管系が不安定な患者には不適切。性行為自体が禁忌なこともあり、治療は慎重に判断

9.2:腎機能障害患者

● 9.2.1 血液透析が必要な重度の腎障害患者

  • 背景:この群に対してはバルデナフィルの安全性データがなく、薬物の排泄や代謝が大きく障害される可能性。
  • 対応禁忌ではないが、「投与しないこと」と明記されており、使用は避けるのが原則

9.3:肝機能障害患者

● 9.3.1 重度の肝障害患者(Child-Pugh Cなど)

  • 背景:肝臓で代謝される薬剤であり、血中濃度の異常上昇→副作用リスク増大
  • 対応禁忌に近い扱いで、「投与しないこと」とされています。

● 9.3.2 中等度の肝障害患者(Child-Pugh B)

  • 背景:血中濃度上昇が見られたことから、通常用量では過量投与となるおそれ
  • 対応開始は5mgなど低用量から慎重に。状態に応じて用量調整と経過観察が必要です。

9.8:高齢者(65歳以上)

  • 背景:加齢によって腎機能・肝機能が低下し、薬剤の代謝・排泄に影響が出やすい。
  • 対応5mgなど低用量から開始し、副作用(めまい、視覚障害、低血圧など)に注意。経過を見ながら用量調整。

総まとめ:特定患者群への投与判断の目安

区分 リスク 原則対応
陰茎の解剖異常 持続勃起・疼痛 慎重投与
血液疾患 プリアピズム 慎重投与
他のPDE5阻害薬 過剰作用 併用禁止
出血・潰瘍 出血リスク 原則非推奨
心疾患(弁閉塞) 失神・虚血 禁忌に準ずる
透析患者 安全性未確認 投与不可
重度肝障害 血中濃度↑ 投与不可
中等度肝障害 血中濃度↑ 5mgから慎重に
高齢者 代謝低下 5mgから慎重に

 

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